ウイスキー

ウイスキーを知る

最終更新日:2023年10月21日

ウイスキーは大麦の麦芽(モルト)・ライ麦・小麦やトウモロコシなどの穀類を原料に造った蒸留酒を樽熟成したものです。ビールを蒸留したお酒と言われることもあって、乾燥させた原料を粉砕してお湯を加えてデンプンを糖化・発酵させた汁はビールの製造途中の麦汁とほとんど同じです。原料を乾燥させる際に炭で燻したり、蒸留した後に樽で熟成させたりすることで生まれる香ばしい琥珀色と味が特徴です。

同じく穀物を原料につくられる蒸留酒であるジン、ウォッカ、焼酎は木樽熟成を行わない点がウイスキーと異なります。また、ブランデーは木樽熟成する蒸留酒ですが原料がブドウなためウイスキーには該当しません。

アルコール度数

40 〜 45%

01ウイスキーの分類・種類

産地による分類

現在、ウイスキーは世界の多くの国で造られていますが、原料と製法、製造される国によって味わいが異なります。歴史の古いものから順にアイリッシュ(アイルランド)、スコッチ(スコットランド)、アメリカン(アメリカ)、カナディアン(カナダ)、ジャパニーズ(日本)が世界の五大ウイスキーと呼ばれて高く評価されています。

アイリッシュ・ウイスキー

アイルランド共和国とイギリスの一部である北アイルランドで造られるウイスキーをアイリッシュ・ウイスキーと呼びます。伝統的なアイリッシュ・ウイスキーは、原料に大麦の麦芽の他、ライ麦や小麦、発芽していない大麦も使用し、ポットスチルで3回蒸留します。そしてアイルランド及び北アイルランドの熟成庫で3年以上熟成することが定められています。これはシングル・ポットスチル・ウイスキーと呼ばれています。クセのないまろやかな味が特徴です。

スコッチ・ウイスキー

イギリス北部のスコットランドで造られるウイスキーをスコッチ・ウイスキーと呼びます。

原料の麦芽を乾燥させる際にピートと呼ばれる泥炭で燻すことで、独特のスモーキーフレーバーをつけるのが特徴です。大麦麦芽だけを使用したモルトウイスキー、トウモロコシなど他の穀類を加えたグレーンウイスキーをブレンドしたブレンデッドウイスキーがあります。

スコッチ・ウイスキーにはシングルモルトウイスキーの銘柄が多数あり、蒸溜所ごとの個性的な味わいを楽しむ愛好家が増えています。

アメリカン・ウイスキー

アメリカ合衆国で造られるウイスキーをアメリカン・ウイスキーと呼びます。原料の51%以上にトウモロコシを使ったバーボン・ウイスキー、原料の51%以上にライ麦を使ったライウイスキー、原料の80%以上にトウモロコシを使ったコーン・ウイスキーなどがありますが、特に人気があるのがバーボン・ウイスキーです。

2年以上熟成したものをストレート・ウイスキーと呼び、それぞれストレート・バーボン・ウイスキー、ストレート・ライ・ウイスキー、ストレート・コーン・ウイスキースと呼ばれます。

また、アメリカン・ウイスキーではストレート・ウイスキーにそれ以外のウイスキーやスピリッツをブレンドしたものをブレンデッド・ウイスキーと呼びます。これはスコッチやジャパニーズでのブレンデッド・ウイスキーとは定義が異なっています。ストレート・ウイスキーを20%以上使うことが定められています。

 バーボン・ウイスキー

バーボンは内側を焦がしたオークの新樽で熟成することで生まれるバニラ香やトースト香、甘みが特徴で、ケンタッキー州で造られるケンタッキー・バーボンとテネシー州で造られるテネシー・ウイスキーが代表的です。テネシー・ウイスキーは原酒をサトウカエデの炭で濾過することが定められています。

カナディアン・ウイスキー

カナダで造られるウイスキーをカナディアン・ウイスキーと呼びます。世界の五大ウイスキーの中で最もライトでスムーズな飲み口で、カクテルのベースとしても多用されます。

ライ麦を主原料に造られるフレーバーリング・ウイスキーと呼ばれる香味の強いウイスキーとトウモロコシを主原料に造られるベース・ウイスキーと呼ばれるクセの少ないウイスキーをそれぞれ3年以上熟成したものをブレンドするのが一般的です。

特にフレーバーリング・ウイスキーの原料の51%以上がライ麦であればラベルにライウイスキーと表示することができます。

ジャパニーズ・ウイスキー

日本で造られるウイスキーをジャパニーズ・ウイスキーと呼びます。1920年代に造られた最初の国産ウイスキーを製造した竹鶴政孝氏がウイスキー造りの技術を学んだのがスコットランドであり、ジャパニーズ・ウイスキーはスコッチ・ウイスキーの流れを汲んだものになっています。そのため、スコッチ・ウイスキーと同様に大麦麦芽を原料に造られるモルトウイスキーとモルトウイスキーにトウモロコシなどで造ったグレーンウイスキーをブレンドしたブレンデッドウイスキーの2種類が主流です。

味もスコッチ・ウイスキーに似ていますが、スコッチ・ウイスキーと比べてスモーキーフレーバーは抑えられており、伸びやかな酒質で、水で割っても風味が崩れないことが特徴です。

また、各メーカーが自前でさまざまなタイプの原酒を造ってブレンドまで行っていることも特徴で、近年に入ってから世界的に評価が高まってきました。

原料による分類

ウイスキーは原料によって大まかに2つに分類できます。

モルトウイスキー

モルト(大麦麦芽)だけを原料に単式蒸留機で蒸留したウイスキーをモルト・ウイスキーと呼びます。原料由来の豊かな風味を持っており、個性を主張することから「ラウド・スピリッツ(声高な蒸留酒) 」とも言われます。

グレーンウイスキー

トウモロコシ、ライ麦、小麦、未発芽の大麦などモルト以外を主原料に連続式蒸留機で蒸留したウイスキーをグレーンウイスキーと呼びます。クセが少なく軽やかでマイルドな味わいが特徴。個性をあまり主張してこないことから「サイレント・スピリッツ(寡黙な蒸留酒) 」とも言われます。グレーンウイスキー単体で販売されているものは少なく、モルトウイスキーなどとのブレンド用の原酒として使われることが多いです。

ライ・ウイスキー

ライ麦を主原料に造られたウイスキーです。アメリカやカナダで作られています。

アメリカでは、1964年に制定された連邦アルコール法によって、①原料の51%以上がライ麦であること②アルコール度80度未満で蒸留すること③内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で熟成することが「ライ・ウイスキー」の条件として規定されています。 また2年以上熟成したものは「ストレート・ライ・ウイスキー」と呼びます。

カナダでは、トウモロコシを主原料に造ったアルコール純度の高いベース・ウイスキーとライ麦を主原料に造った芳香の強いフレーバーリング・ウイスキーをブレンド、加水して造る方法が一般的で、特にブレンドに使用するフレーバリング・ウイスキーの原料の51%以上がライ麦であれば「ライ・ウイスキー」とラベル表示することができます。「カナディアン・ライ・ウイスキー」とも呼ばれます。

混合のしかたによる分類

ウイスキーの多くは複数の原酒を混合して製品化されます。混合することで銘柄としての味や品質が安定するほか、混合する原酒の種類や比率によって様々な味わいのウイスキーを生み出すことができます。

モルトウイスキー同士やグレーンウイスキー同士を混合することをヴァッティング(バッティング)、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混合することをブレンドと呼びますが、近年はヴァッティングという言葉は使わず、いずれもブレンドと呼ばれる傾向があります。

近年はシングルモルトがブームで偏重される傾向がありますが、シングルモルトがブレンデッドより上質であるというわけではありません。

ブレンデッドウイスキー

モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして造られたウイスキーをブレンデッドウイスキーと呼びます。

複数の蒸溜所でつくられたモルトウイスキーと、数種類(2〜3種)のグレーンウイスキーをブレンドするのが一般的です。バランスがとれて飲みやすく、奥深い味わいが魅力です。

シングル

一箇所の蒸留所で蒸留した原酒をビン詰めしたものをシングルと呼びます。

シングルモルト

ある一つの蒸溜所でつくられたモルトウイスキーのみを瓶詰めしたものをシングルモルトと呼びます。蒸溜所ごとの個性が明確で、蒸溜所名がブランド名として使われていることが多いです。

シングルグレーン

ある一つの蒸溜所でつくられたグレーンウイスキーのみを瓶詰めしたものをシングルグレーンと呼びます。シングルモルトと比べると銘柄が多くありません。

シングルカスク、シングルバレル

特に選ばれたひとつの樽の原酒のみを瓶詰めしたものをシングルカスクやシングルバレルと呼びます。カスクもバレルも樽のことで、スコッチ・ウイスキー、アイリッシュ・ウイスキーではカスク、アメリカン・ウイスキーやカナディアン・ウイスキーではバレルと呼ばれます。樽ごとの個性を味わうことができますが、ひとつの樽から生産できる量は限られるため希少性が高く入手しづらいウイスキーです。

ヴァッテッド

複数の蒸溜所で蒸留したモルトウイスキーのみ、もしくはグレーンウイスキーのみをヴァッティングして瓶詰めしたウイスキーです。2009年スコッチウイスキー規則によってヴァッテッドと表記することが禁止されたため、近年はこの用語が使われなくなり、ブレンデッドモルトウイスキー、ブレンデッドグレインウイスキーと呼ばれます。

ブレンデッド・モルト・ウイスキー

複数の蒸溜所で蒸留したモルト・ウイスキー同士を混ぜ合わせてビン詰めしたもの。過去にはヴァッテッドモルトやピュアモルトなどとも呼ばれていましたが、これらの呼称は2009年スコッチウイスキー規則で禁止されたことから、使われなくなっています。

ブレンデッド・グレーン・ウイスキー

複数の蒸溜所で蒸留したグレーン・ウイスキー同士を混ぜ合わせてビン詰めしたもの。

02ウイスキーの起源

ウイスキーががいつ誕生したかはハッキリとは分かっていませんが、中世のアラビアの錬金術師達が生み出した蒸留酒の技術が伝わったアイルランドで最初に造られたというのが有力な説です。

アイルランドには4〜5世紀頃にはキリスト教の伝道師によって既に蒸留酒の製造技術が伝えられていたという説もあり、かなり古くから蒸留酒が造られていたようです。原料としてはブドウが獲れなかったため、大麦、小麦、ライ麦などが使われました。

アイルランドで始まった蒸留酒づくりは、ケルト人がスコットランドに移住するのに伴い、12世紀頃までに広く伝わっていきました。

ウイスキーについて伝わっている最古の記録としては、イングランド王ヘンリー2世がアイルランド侵攻した後の1172年の記録として「アイルランドで麦を原料にした “ウスケボー” という酒が飲まれていた」というものがあります。しかし、これは公式の記録としては認められていません。

ウイスキーについて記された最古の古文書として認められているのは、1494年のスコットランド王室財務省の記録で「修道士ジョン・コーに8ボル(約500kg)の麦芽を与え、アクア・ヴィーテを造らしむ」というものです。

ウイスキーの語源

ウイスキーの源流は中世の錬金術師が伝えた蒸留酒ですが、錬金術師達は蒸留酒をラテン語で”生命の水”を意味する「アクア・ヴィタエ(aqua vitae)」と呼んでいました。これが12世紀頃までにアイルランド、スコットランドに伝わった際に現地の言葉であるゲール語(ケルト語の一種)に置き換えられて「Uisge-beatha(ウシュク・ベーハ)」や「Usquebaugh(ウスケボー)」などと呼ばれました。それが17~18世紀頃には 「uiskie(ウスキー)」や 「usky(ウスキー)」や「whiskey(ウイスキー)」や「whisky(ウイスキー)」など様々に転訛しました。それがウイスキーの語源です。

03樽熟成の始まり

18世紀初め頃までのウイスキーは現在のような琥珀色ではなく無色透明で、当時ロシアやポーランドで造られていたウォッカとよく似たものでした。熟成を目的に樽が使われることはありませんでした。

それが現在のように樽熟成を行うことで琥珀色で豊かな香りや味わいのお酒へと姿を変えた経緯は産地によって歴史が異なりますが、19世紀初め頃には現在知られているウイスキーの姿が出来上がっていました。

スコッチウイスキーの場合はスコットランドが1707年にイングランドに併合された後に麦芽税が増税されたために、山奥で密造してワインの空き樽に隠したりするようになりました。これによりウイスキーが樽熟成され、結果として風味がよくなることが分かって製造方法として定着したといわれています。アイリッシュウイスキーの場合に、樽熟成を行うようになった経緯の詳細は不明ですが、アイルランドとスコットランドの地理的な近さや文化的な繋がりから、製法に関しても影響があったものと思われます。

アメリカンウイスキーは18世紀以降にアイルランドやスコットランドから移住した人達が作っていたウイスキーが始まりですが、特に有名なバーボンウイスキーは偶然に内側を焦がした樽を使って熟成させたことで、赤く独特の香ばしい味わいのウイスキーとして18世紀後半に誕生しました。カナディアンウイスキーは18世紀後半にアメリカから移住してきた人達が作り始めました。こちらも樽熟成を行うようになった経緯の詳細は不明ですが、アメリカとの地理的な近さから製法の影響があったのかもしれません。

最後に、ジャパニーズウイスキーは20世紀に入ってからスコッチウイスキーの製造方法を参考に産み出されました。ですので、ジャパニーズウイスキーは最初から樽熟成の工程を踏んで造られました。

ウイスキーのスペルは whisky? whiskey?

現代においてウイスキーのスペルは2種類が存在しています。whiskey とwhisky です。最後が key(キー、鍵)になっている方を「鍵付き」もう一方を「鍵なし」と呼んだりします。

一般的にアイリッシュウイスキーなど、アイルランドの流れを汲むものが鍵付きで whiskey 、スコッチウイスキーなど、スコットランドの流れを汲むものが鍵なしで whisky と表記されています。

それぞれの地域で歴史的にどちらのスペルも使われていたことがありますが、アイルランドとスコットランドのそれぞれがウイスキーの起源を主張しており、スペルの違いがそれぞれのオリジナリティの主張と相まって定着した節があるようです。

バーボンに代表されるアメリカンウイスキーのスペルはwhiskey が使われていることが多いですが、アイルランドからの移住者が多かったためといわれています。ただしバーボンでも whisky のスペルが使われているものもあります。ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーをもとに誕生した歴史からwhiskyと表示されています。また、カナディアンウイスキーもwhiskyと表記されています。

それぞれ例外もありますが、大まかに次のように表記が分かれます。

whiskey

アイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー

whisky

スコッチウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキー

04五大ウイスキーの盛衰

19世紀前半にはウイスキーと言えばアイリッシュと言えるほど、アイリッシュウイスキーが世界で飲まれていました。しかし、増税や19世紀半ばにアイルランドで発生したジャガイモ飢饉と呼ばれる大飢饉による国内の壊滅的な状況から生産量が減ってしまいます。

一方、スコットランドでは麦芽税の軽減によってウイスキー造りをしやすくなった状況の中で、発明されたばかりの連続式蒸留機を活用し、大麦以外の原料を使った安価なグレーン・ウイスキーが大量生産されるようになりました。これは、従来のウイスキーと比べてクセが少なくすっきりとした味のものでした。大麦を原料に単式蒸留機で造られる従来からのモルト・ウイスキーも人気でしたが、味や質が樽ごとにバラ付きがあるという問題を抱えていました。そんな中で19世紀半ばに複数の樽のモルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキー をブレンドすることで品質を安定させる手法が編み出されます。これはブレンデッド・ウイスキーと呼びますが、モルト・ウイスキーの味わい深さとグレーン・ウイスキーの飲みやすさを兼ね備えており、人気を集めました。19世紀後半にヨーロッパのブドウ畑にフィロキセラという害虫が大発生して、ワインやブランデーの生産が壊滅的な状況になってしまうという出来事がありましたが、その時にワインに代わるお酒として選ばれたのはブレンディッド・ウイスキーでした。

20世紀に入ってから、アイリッシュウイスキーの生産はアメリカでの禁酒法施行による需要減、アイルランド独立運動への報復として行われたイギリスによる関税引き上げなど困難な状況が重なり、大きく衰退してしまいました。アイリッシュウイスキーの流通量が減る中で、イギリスはスコッチウイスキーの輸出に力を入れ、禁酒法によるダメージを受けつつも生産量は逆転し、世界的にスコッチウイスキーの人気が定着しました。

1920から1933年の禁酒法時代にアメリカのウイスキー産業が大打撃を受けた中で、カナディアンウイスキーは逆に大きく発展しました。カナダでも禁酒運動は行われましたが、製造と輸出が禁止されなかったため、アメリカへの大量の密輸が行われたのです。同じ頃、日本ではスコッチウイスキーの製造法を学んだ竹鶴政孝によって初めての国産ウイスキーが誕生します。

禁酒法と第二次世界大戦が終わった1950年代以降にスコッチウイスキーやアメリカンウイスキーは復調し生産が拡大しましたが、1980年代になって特にスコットランドで生産過剰と在庫の増加のために生産量が激減します。健康意識の高まりによってアルコール販売や広告が規制されたことや、若い世代の飲酒嗜好の変化によるウイスキー需要の減少などもあいまって、世界的にウイスキー産業が低迷しました。

その後、1990年代半ば以降にシングルモルトの人気の高まり、さらに2010年代以降に世界的なクラフトウイスキーブームが起こり、再びウイスキー市場は活性化しています。

そんな中で、後発のジャパニーズ・ウイスキーは、2000年代以降に多くの国際的な賞を受賞して世界的な評価が高まりました。

また、すっかり勢いを失っていたアイリッシュウイスキーでしたが、20世紀終わり頃に新たな蒸留所が建てられて個性あふれるウイスキーを次々と発表し、既存のブランドも再評価され再び注目を集めています。

ウイスキー全般

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