醸造酒とは?蒸留酒・混成酒との違い・種類や歴史を詳しく解説

醸造酒とは?蒸留酒・混成酒との違い・種類や歴史を詳しく解説

醸造酒(じょうぞうしゅ)を知る。

最終更新日:2021年12月16日

醸造酒とは、穀物や果実などをアルコール発酵させて造られるお酒です。発酵によって原料の中にアルコールが生まれるのです。

ビールワイン日本酒などが主な醸造酒です。

お酒は、製造方法によって醸造酒蒸留酒混成酒の3つに大きく分けられますが、蒸留酒は醸造酒を元にして作られますし、混成酒は醸造酒や蒸留酒を元に作るので、醸造酒は全てのお酒の原点と言えます。

01 代表的な醸造酒

ワイン

ブドウの実を発酵させて造ったお酒で葡萄酒(ぶどうしゅ)とも呼ばれます。色から赤・白・ロゼの3種類に分けられます。

ビール

大麦を発芽させた麦芽を発酵させて造ったお酒です。麦酒(ばくしゅ)とも言います。製法によってラガービールとエールビールに分けられます。

日本酒

米と麹と水を原料に発酵させて造った日本のお酒です。清酒(せいしゅ)ともいいます。

シードル

林檎(りんご)の実を発酵させて作ったお酒。林檎酒。

ミード

水で薄めた蜂蜜(はちみつ)を発酵させて作ったお酒。蜂蜜酒。

プルケ

竜舌蘭(リュウゼツラン)の一種であるマゲイの樹液を発酵させて作られるメキシコのお酒。

醸造とは(醸して造る)

醸造とは、発酵作用を利用して穀物や果実を原料に酒、味噌、しょうゆ、酢などの飲食品を造ることです。

現在ではビールやワインなどに対しても使われる言葉ですが、日本では元来は麹(こうじ:発酵に有効なカビなどの微生物を米・麦・大豆などに繁殖させたもの)を使って発酵させるものについて使われる言葉でした。

 

「醸」の文字の左側の「酉」は「酒(さけ)」の漢字にも使われていますが、酒造りの容器をかたどったもので、右側の「襄」には詰め込むという意味があり、漢字全体として穀物を容器に詰め込んでお酒を造るという意味があるそうです。

送り仮名をふって「醸す」と書いて「かもす」と読みますが、この言葉にも「雰囲気などを作り出す」という意味の他に「麹(こうじ)を発酵させて、お酒やしょうゆを造る」という意味があります。

「かもす」という言葉の由来には諸説あります。一説には「かむ=醸む(かむ)=嚼む(かむ)」で、古来のお酒が生米などの穀物や木の実を口の中でかんで唾液と一緒に放置することで発酵させて作った口噛み酒(くちかみさけ)だったことに由来していると言われています。もう一説には「かぶ=黴ぶ(かぶ)=醸ぶ(かぶ)」で、お酒を造る際に黴(カビ)を繁殖させて発酵させたことに由来していると言われています。

02発酵とは?

発酵とは、微生物が生きるエネルギーを得るために糖などの有機物を分解・化合して、違う物質が発生する過程(代謝プロセス)のことです。ざっくり言うと人間にとっての呼吸、植物にとっての光合成と同じようなものです。

人間をはじめとした動物の呼吸の場合だと、酸素を取り込んでエネルギーを得て老廃物として二酸化炭素が生成されますが、微生物の発酵の場合は微生物の種類によって生成される物質は様々で、その生成物質によって様々な呼称があります。酵母菌によるアルコール発酵、乳酸菌による乳酸発酵、酢酸菌による酢酸発酵、クロカビによるクエン酸発酵、ある種の細菌によるアミノ酸発酵などが代表的です。

また発酵の起こる環境として酸素を必要とするかどうかによる分類があります。酸素のない状態で起こるものを嫌気発酵(嫌気的発酵)もしくは無気発酵、酸素のある状態で起こるものを好気発酵(好気性発酵)もしくは酸化発酵といいます。アルコール発酵、乳酸発酵、酢酸発酵は嫌気発酵、クエン酸発酵やアミノ酸発酵は好気発酵です。

 

お酒も発酵食品

発酵を利用して造られた食品を発酵食品と呼びますが、ワイン・ビール・日本酒などの醸造酒も発酵食品です。醸造酒の製造には、酵母菌が糖(炭水化物)を代謝してアルコールと二酸化炭素を生成する、アルコール発酵という仕組みが利用されています。

発酵食品にはパンヨーグルト・チーズ・みそ・みりん・しょうゆ・納豆など、非常に多くのものがあります。食品それぞれによってそれを生み出すことのできる微生物は異なるほか、発酵に適した環境も異なっており、美味しい食品を作るには気温や触れる酸素の量、酸の強さ(pH・ペーハー)などを絶妙に調整することが必要となります。発酵のメカニズムが解明されたのは近現代に入ってからですが、発酵食品は人類の文明が始まる以前から存在していたと考えられています。現在ありがたくいただける発酵食品はどれも、昔の人々の試行錯誤と経験則の積み重ねによって得られたものです。

 

発酵は腐っているのと同じ!?

納豆やチーズは日本人にとって特に身近な発酵食品ですが「これは腐ったもの」と耳にすることがあります。「腐っている」というと聞こえが悪いですが、発酵と腐敗はどちらも微生物にとっては同様の生理現象で代謝によって生じる化学変化です。その意味においては腐っているのと同じというのは間違いではありません。微生物の代謝によって人間にとって有用な物質が生成される場合に発酵と呼んで、アンモニアや硫化水素など臭くて人間に有毒な物質が生成される場合に腐敗と呼んでいるわけです。つまり人間の都合で表現を分けているわけですが、そういうわけで発酵食品とは発酵したものであって、腐ったものという表現は適切ではありません。

 

醸造酒の発酵の種類とアルコール度数

既に説明してきたように醸造酒アルコール発酵を利用して造られる発酵食品です。

アルコール発酵を起こすには糖分と酵母が必要ですが、原料によって元から糖分が含まれているものとそうでないものとがあります。その違いから醸造酒を造る際に発酵を起こす方法として、単発酵複発酵の2種類の方法が存在します。

 

単発酵

果物のように糖分をたくさん含んでいるものは、酵母菌と一緒に自然環境に置いておくだけで発酵が起きてお酒ができます。これを単発酵と呼び、そうしてできるお酒が単発酵酒です。

発酵を起こす微生物はドロドロとした高濃度の糖分の中では生きられないため原料として仕込める糖分の濃度には限界があり、単発酵で生成されるアルコール度数は最高でも12度程度となります。

代表的な単発酵酒には、ブドウが原料のワインやリンゴが原料のシードル、ハチミツが原料のミードなどがあります。

 

複発酵

米や麦のような穀類など、それ自体が糖分を含んでいないものを発酵させるには、まず原料に含まれているデンプンを麹菌や酵素によって糖に変化させる必要があります。このように糖化が必要となる発酵を複発酵と呼び、それによって造られるお酒が複発酵酒です。

複発酵には単行複発酵並行複発酵の種類の方法があります。

 

単行複発酵

デンプンの糖化とアルコール発酵の2つの工程を1つずつ順番に行う複発酵を単行複発酵といいます。単行複発酵で生成されるアルコール度数は単発酵と同様で最高でも12度程度となります。

代表的な単行複発酵酒にはビールがあります。

 

並行複発酵

デンプンの糖化とアルコール発酵を同時進行で行う複発酵を並行複発酵といいます。発酵を起こす微生物は高濃度の糖分の中では生きられないのですが、並行複発酵では糖分が順次アルコールへ分解されていくため原料の仕込濃度を高くすることができ、結果として生成されるアルコール度数を20度程度まで高めることができます。醸造酒の中で最もアルコールが強いのは日本酒です。酵母菌はアルコールが濃くても活動できないのですが、日本酒の場合は、米や麹に含まれる酵素などの作用によってアルコールによる酵母への影響が妨げられることで、アルコール度数20%のお酒を作ることができます。これは日本が世界に誇れる独自の伝統技術です。

並行複発酵酒には日本の清酒(日本酒)中国の紹興酒などがあります。この方法はアジア地域に特有のものです。

 

発酵の歴史

発酵の種類の中でも単発酵は果物と酵母菌が存在すれば人の手を介さずに自然に生じることから、ワインなどの醸造酒は元から自然界に存在しており、人類の文明が誕生した頃には既に嗜まれていたと考えられています。

人類は文明の始まった頃から発酵を飲食物に活用していたわけですが、なぜそういう変化が起こるのかについては神の力によるものとされており長い間不明のままでした。

そもそも微生物の存在が発見されたのは近世に入ってからの17世紀末のことで、さらに発酵が酵母の活動によって起きていることが議論され始めたのは19世紀に入ってからで、その仕組みが明らかになったのは人類の歴史の中でも最近のことです。

1830年代以降、発酵が何らかの生命的な活動によって生じるとする説とそうではなく単なる化学物質の化学変化に過ぎないとする説とが対立しました。

この論争はフランスの化学者だったルイ・パスツール(Louis Pasteur 1822-1895)が1860年頃に微生物である酵母によってアルコール発酵が起きていることを解明したことで決着しました。パスツールが発酵のメカニズムを発見したきっかけはワイン製造業者からワインが腐敗する原因の調査を受けたことだったのですが、ワインの腐敗もまた微生物の働きによるものであることを突き止め、その腐敗を防ぐ低温殺菌法を開発しました。パスツールが残した言葉の中に「一本のワインのボトルの中には、全ての書物にある以上の哲学が存在する。」というものがありますが、ワインを通じていくつかの化学的な発見をした彼が言ったからこそ、名言として語り継がれたのでしょう。

その後、1897年ドイツの生化学者のエドゥアルト•ブフナー(Eduard Buchner 1860-1917)が生きている酵母の細胞ではなく、酵母の細胞を介さずとも酵母の細胞内に存在する物質(酵素)によって発酵が起こることを発見しました。これをきっかけに多くの化学者達によってさまざまな酵素とその働きが発見され、現在ではアルコール発酵に関わる酵素とそれによって起こる化学反応のメカニズムが明らかにされています。

 

発酵と酵素の関係

発酵は微生物の生命活動によって生じるものですが、その化学変化を起こす触媒となるタンパク質を酵素と呼んでいます。触媒とは化学反応に際してそれ自身は変化せずに他の物質の化学変化を促進させる物質のことです。

微生物はその名の通り生命体ですが、酵素は微生物の体内に存在する物質で、酵素自体は生命体ではありません。酵素の設計図は遺伝子に記録されており、生命体にとって必要な時に必要な量が生成される仕掛けとなっているそうです。その仕組みが化学的に解明されているとはいえ、生き物の体にそのような仕掛けが宿っていることは驚異的で、昔の人々が生物には神秘的な力が宿っていると考えたのは自然なことに思えます。

なお発酵の歴史で触れているようにアルコール発酵を起こす酵素群はドイツの生化学者のブフナーが発見してチマーゼと名付けられています。

03醸造酒の起源

人類とお酒との出会い

アルコール発酵は糖と酵母があれば自然環境で生じることから、人類が誕生した時には既に自然界に存在しており、熟れて発酵した果実を食したり雨水などに混ざって溜まっていた発酵液をすくって飲んだりしていたと考えられています。アルコール発酵した果実はその香りから見つけやすく、またアルコールには殺菌作用があり体に有害な病原菌などが繁殖しずらいなどの利点がある一方、食べて酔っ払ってしまうと害的に襲われやすくなるというデメリットがありました。人類の先祖がまだ類人猿と種分化する前の時代には、アルコールを分解する能力を持っていなかったのが、生き残りをかけた進化の中でアルコールを消化・分解できる体となった集団が生き延びて、我々人類の祖先になったという説があります。

 

人類が最初に作ったお酒

自然界に存在するアルコールでなくて人が手をかけて醸造したお酒として最も古くに飲まれていたのは蜂蜜からできるミードだったとされており、1万年以上前から飲まれていたと考えられています。

ヤシの樹液を集めて発酵させたヤシ酒もまたアフリカや南アジアやオセアニアなどヤシの生えている地域では1万年以上前から飲まれていたと考えられています。

主に熱帯地域で主食となっているキャッサバ芋は既に紀元前1万年以前には南米アマゾン川流域の地域で栽培されていたとも言われており、これを原料に造られるお酒もまたかなり古い時代から造られていたと考えられています。古くはキャッサバ芋を噛んでそのデンプンを唾液で糖化させたうえで発酵させていました。

古来のキャッサバ酒のように糖分を含まずデンプンを主体とする穀物などを口で噛んで糖化させてから造られる酒を口噛み酒といい、中南米やアフリカの他、東南アジアや古代日本周辺の地域でも造られており、人為的に醸造された最初のお酒は口噛み酒であるとする説もあります。

 

酒造りの痕跡

現在見つかっている最古の酒造りの痕跡は今から約9000年前、中国の河南省の遺跡で見つかった紀元前7000年頃の素焼きのかめで、米・野ぶどう・サンザシの実・蜂蜜などを原料にした飲料の痕跡が残っていました。これはミードとワインとビールが合わさったようなお酒だったと考えられます。

ワインも古くから飲まれていると考えられていますが、現在見つかっている最古のワインの痕跡はジョージア(旧グルジア)で見つかった紀元前6000年頃(約8000年前)の陶器のつぼで、ブドウの装飾がされておりワイン醸造の痕跡が残っていました。ワイン用のブドウの発祥地もこの辺りの地域とする説が有力です。

最古のビールの痕跡はイランのゴディン・テペ遺跡で見つかった紀元前3500年頃(約5000年前)のつぼで、六条大麦を使った醸造の痕跡が残っていました。当時のビールは飲むパンと言った方が近いドロドロとしたもので、栄養も豊富なものでした。

古代エジプトでは労働者への賃金として当時のビールが支給されていた記録が残っており、最初の頃のお酒は現代のように寛ぐための嗜好品としてのアルコールではなくて、栄養を摂取するための主食としての側面が強いものだったと考えられています。

 

アフリカのサハラ以南で主食として生産されているモロコシを使ったお酒(ビールと製法が同等なためモロコシ・ビールとも呼ばれる)は、現在でもこのお酒を主食としている人々がいますが、スーダンにある紀元前5000年頃のカデロ遺跡からはモロコシなどの穀物の痕跡がある土器が見つかっており、当時からモロコシ酒が飲まれていた可能性が考えられています。

モンゴルなど馬の飼育が盛んな地域で飲まれている馬乳酒(馬の乳を発酵させて造ったお酒)は紀元前4,500年頃から中央アジアの遊牧民達の間で飲まれていたと考えられています。

メキシコで飲まれているプルケ(リュウゼツランの樹液を発酵させて造ったお酒)は諸説ありますが、約2000年程前には飲まれていたと考えられています。

メキシコの南にあるホンジュラスでは紀元前1400年頃の土器にカカオの痕跡が残っており、発酵させて飲んでいたと考えられています。

 

これらは現代になって見つけることのできた痕跡で、それぞれより古い時代から作られていたと推測され、今後最古の記録が更新されていく可能性があります。

また、それぞれの地域が影響しあっているのか、それともそれぞれ独自に醸造技術を発明したのかは定かでありませんが、人類の歴史上の非常に古い時代から世界各地で酒造りが行われていたことが分かっています。

 

なお日本酒の起源は諸説あるものの定かではなく、ら米による酒造りの最古の記録は奈良時代の初め頃(8世紀初め頃)のものです。