シャルトリューズ | しっぽり...

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シャルトリューズを知る

シャルトリューズはフランスのグランド・シャルトリューズ修道院(カトリック教会に属する修道会の1つであるカルトジオ会の修道院の総本山)が製造しているハーブ系・薬草系リキュールの銘酒です。

1605年にフランスの宮廷人だったフランソワ・アンニバル・デストレから贈られた「エリクサー(不老長寿の霊薬)」について書かれた写本を元に1737年に完成されました。

その製造法は門外不出の秘伝とされており、現在も130種類あると言われる素材となるハーブや植物の種類とその調合方法は謎に包まれており、リキュール造りを任された2人の修道士だけが知っています。
2007年にはフランス文化の優れた継承者たる職人に与えられる最高の称号である国家最優秀職人賞(M.O.F)のリキュール部門を(Liqueur des Meil​​leurs Ouvriers de France)授与されました。

シャルトリューズの飲み方は、ストレートやロックで飲むのが基本的なスタイルですが、ソーダやトニックで割ったり、カクテルの材料としても使われます。
  1. 写本の伝承から100年以上の時を経て完成されたエリクシルとヴェール
  2. レシピ根絶の危機を乗り越えて生み出されたジョーヌ
  3. シャルトリューズブランドの接収と幾多の苦難を乗り越えて
  4. 現代の製造の流れ
  5. シャルトリューズを材料に使ったカクテル

写本の伝承から100年以上の時を経て完成されたエリクシルとヴェール

シャルトリューズ・リキュールの歴史は17世紀初頭の1605年に、パリ郊外の小さな街ヴォヴェール(Vauvert)のカルトジオ会の修道士が当時フランス王アンリ4世の軍司令官だったフランソワ・アンニバル・デストレ(François-Annibal d'Estrées)から「エリクサー(不老長寿をもたらすとされる霊薬)」について書かれた古い写本を贈られたことに始まります。
この写本はおそらく、エリクサーの完成を目指して日夜研究に没頭していた16世紀以前の錬金術士によって書かれたものでしたが、内容が非常に難解で、理解できたほんの一部だけが、ヴォヴェールでの薬草による治療に使われただけでした。

時を経て18世紀の初めに、写本はグランド・シャルトルーズ修道院に送られ徹底的に研究さた結果、1737年に薬剤師のジェローム・モーベック修道士が製法を解き明かし、薬酒として製造を始めました。当初はグルノーブル(Grenoble)や近隣の村で細々と売る程度でした。このエリクサーはその美味しさから薬というより飲料として扱われました。現在、この原初のエリクサーは「エリクシル・ヴェジェタル(ELIXIR VEGETAL)」(アルコール度数69%)として復刻製造されていますが、日本には輸入されていません。

1764年、エリクサーのレシピをよりマイルドにしたところ、絶大な人気を集めグランド・シャルトリューズ以外の地域にも広く知れ渡りっていきました。これが現在の「シャルトリューズ・ヴェール(CHARTRUSE VERTE)」(アルコール度数55%)です。「ヴェール」はフランス語で「緑色」を意味します。「グリーン・シャルトリューズ」とも呼ばれます。


レシピ根絶の危機を乗り越えて生み出されたジョーヌ

1789年に起こったフランス革命の中でキリスト教は弾圧され聖職者達は修道会の解散と国外退去を命ぜられ、カルトジオ会の修道士達は1793年にフランスを去ることとなりました。その際「エリクサー」の写本のコピーを作って、グランド・シャルトリューズ修道院に残ることになった1人に託しましたが、修道士達が修道院を去った直後、彼は逮捕され刑務所に送られてしまうのです。

幸いにも、写本のコピーのオリジナル側を任されていた修道士は検挙されず、その友人のドム・バジーレに秘密裏に渡しました。
ドム・バジーレは、自分にはエリクサーを造る能力がないし、フランスに修道会が戻ることはないと考え、薬剤師のリオタールに写本を売り渡しました。
リオタールは、1810年にナポレオン皇帝から「秘伝」とされている全ての薬の処方を内務省に送るようにとの勅命が下された際に写本を提出しましたが、既知のもので「秘伝」とはみなされないとして「拒否」の印と共に返されました。リオタールは一度もエリクサーを造ることなく亡くなりました。

このように、シャルトリューズのレシピが書かれた写本は非常に数奇な境遇を乗り越えて、1816年に修道士達がグランド・シャルトリューズ修道院に戻った時、リオタールの相続人によって彼らの手に戻されました。
その後1838年、シャルトリューズの蒸留所はより甘い種類のリキュールを作りました。これが現在も造られている「シャルトリューズ・ジョーヌ(CHARTREUSE JAUNE)」(アルコール度数40%)です。「ジョーヌ」はフランス語で「黄色」を意味します。「イエロー・シャルトリューズ」とも呼ばれます。

1860年、 サン・ローラン・デュ・ポン(Saint-Laurent-du-Point)という小さな村の近くにあるフルヴォワリ(Forvoirie)の地に蒸留所を建てて、エリクシル、ヴェール、ジョーヌ、ブランシェ(シャルトリューズ・ホワイト1840年〜1880年及び1886年〜1900年まで造られた)の製造を拡大しました。


シャルトリューズブランドの接収と幾多の苦難を乗り越えて

1903年、フランス政府はシャルトリューズの蒸留所を国有化し再び修道士は追放されました。
彼らはすぐにスペインのタラゴナ(Tarragona)に新しい蒸留所を建てて、リキュール造りを再開しましたが、フランス政府が「シャルトリューズ」を国有化し、しかも数年後には修道会とは何の関係もない「グランド・シャルトリューズ・ファーマー・カンパニー」という民間企業に売却してしまったため、その名前を名乗ることができませんでした。

タラゴナで造られたリキュールは「タラゴナ」という愛称で呼ばれ、それが本物のシャルトリューズであることは誰もが知っていたため、本物を望んでいた人は「タラゴナ」を買い求めました。

1921年に修道士達はタラゴナの蒸留所の運営を続けつつもフランスに戻り、マルセイユに蒸留所を構えました。タラゴナで蒸留したアルコール成分を混ぜてリキュールを造り、愛称ではなく正式に「タラゴナ」という名前で売り出しました。タラゴナは当時スペインの名前を持つ唯一のリキュールでしたが、フランス産という面白い状況でした。

「シャルトリューズ」の商標権を買った企業が1929年に破産したため、修道士の友人達はこれを買い取って、彼らに提供しました。おかげで、カルトジオ会は「シャルトリューズ」の商標権を取り戻しただけでなく、マルセイユからフルヴォワリの蒸留所に戻り、真のシャルトリューズ造りを再開しました。

しかしそれもつかの間、1935年に地すべりによってフルヴォワリの蒸留所はほぼ完全に崩壊するという災難が起こってしまいました。
破壊を免れた貯蔵用のオーク樽と銅製の蒸留機は、彼らのエージング・セラー(熟成用の貯蔵庫)があったヴォワロン(Voiron)の町へ運ばれ、以来、ヴォワロンでのシャルトリューズ造りが続いています。
ちなみにこのヴォワロンのエージング・セラーは1966年に164メートルまで拡張され、現在では世界最大のリキュール貯蔵庫となっています。

タラゴナの蒸留所の運営が1989年に終了して以降、すべてのシャルトリューズはヴォワロンで造られていますが、2011年にリキュールの生産地の環境についての法規制が強化されたことを受けて、住宅街から近いヴォワロンからアントル・デュー・ギエ村(Entre-Deux-Guiers)のエグノワール(Aiguenoire)の地へ移動することが決まっています。
エグノワールでのシャルトリューズ造りは2018年から始まります。

なお1970年以来、「シャルトリューズ・ディフュージョン(Chartreuse-Diffusion)」という会社が、2人のカルトジオ修道士によって調合された製品を瓶詰、包装、広告、販売を担当しています。

シャルトリューズの販売によって得られる資金によって、修道会は俗世間から離れた静寂の中で祈りを捧げ、禁欲的で規律正しい生活を送る修道活動を維持してるようです。


現代の製造の流れ

130種類もの素材やその製造法の詳細は謎に包まれているものの、シャルトリューズの公式サイトには、現代の製造工程の概要が紹介されています。
シャルトリューズ公式サイト(フランス語)

毎年18トンもの材料を乾燥、粉砕、ブレンドした後に蒸溜所へ運びます。ただし、蒸留所に入ることができるのは材料の知識を持っている2人の修道士と2人の手伝い人だけです。
蒸留所に運び込まれた材料は慎重に選び抜かれたアルコールに浸漬されます。その後、8時間かけてシャルトリューズ専用に設計されたステンレスの蒸留機で蒸留しています。
蒸留によって凝縮されたアルコールに植物を浸すことでシャルトリューズ特有の色(ヴェールの緑、ジョーヌの黄色)が付き、最終的な調整の後にオーク樽で熟成されます。

数年後、ボトリングできる状態かどうかの決定権を持つ修道士が試飲して判断が下されてはじめてボトリングが可能となります。
ボトリングは自動化されていて、その後世界の約100カ国へ出荷されています。

リキュールの一部はさらに長時間(トータルで8年以上とされる)熟成されたうえで、再度、蒸溜所長の試飲と宣言によってパッケージ化されて販売されます。これは薬草系リキュールの最高級品です。
「シャルトリューズ・ヴェール V.E.P(CHARTREUSE VERTE V.E.P)」(アルコール度数54%)「シャルトリューズ・ジョーヌ V.E.P(CHARTREUSE JAUNE V.E.P)」(アルコール度数42%)があります。「V.E.P」は「特別長期熟成」を意味しています。
V.E.Pのボトルは、1840年当時のボトルを復刻したもので、シリアルナンバーが振られワックスでシールされたうえで、特製の木箱に入れられます。



シャルトリューズを材料に使ったカクテル