テキーラ

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テキーラを知る

ブルー・アガベの葉

テキーラはメキシコ特産の蒸留酒(スピリッツ)です。アガベというアロエに似た多肉植物の一種であるブルー・アガベを、糖化・発酵・蒸留して造られます。メキシコにはアガベから作られるメスカルという蒸留酒がありテキーラはその一種とされていましたが、テキーラと同様にメスカルが原産地呼称統制の対象となったことにより、定義上はテキーラはメスカルの一種から外れました。

ジン、ウォッカ、ラムと共に世界4大スピリッツのひとつに数えられています。

テキーラは塩やライムを舐めながらストレートで飲まれることが多いです。これはテキーラの甘みを引き立てて飲みやすくする他、ライムに含まれるビタミンCがアルコール分から喉を守ってくれるためだそうです。

その他、カクテルのベースとしてもよく用いられます。

日本ではショットグラスで一気飲みする罰ゲームに使われるイメージがあったりしてアルコール度数が高いと思われがちですが、多くのテキーラは40%くらいでウイスキーやラム酒など他の蒸留酒と比べても同程度だったり、平均すると低い場合が多いです。

 

テキーラのショットグラスとレモンと塩

アルコール度数

35 〜 55%

01テキーラの定義

テキーラは原産地呼称統制の対象でメキシコ公式規格(NOM:Norma Oficial Mexicana)によって原料の種類や量、生産地、製造方法などが細かく定められており、テキーラ規制委員会(CRT:Consejo Regulador del Tequila A.C.)の認可を受けたものだけがテキーラを名乗ることができます。

NOMによるテキーラの規格は主に次のようなものです。

原料のアガベ(Agave)には、アガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバー(通称ブルー・アガベ)のみを使う。また原料糖分の質量51%以上はブルー・アガベから抽出したものを使わなくてはならない。

ちなみにアガベはメキシコではマゲイ(Maguey)日本では竜舌蘭(リュウゼツラン)とも呼ばれます。サボテンの仲間と誤解されがちですが違います。アガベには100〜200種類以上の品種があるともいわれていますが、19世紀後半にフランスの植物学者フレデリック・アルベルト・コンスタンチン・ウェーバー(Frédéric Albert Constantin Weber)がメキシコのサボテンやアガベの植物学的分類を行った中でテキーラの製造に最適なアガベはブルー・アガベであると言及しました。そして1902年にウェーバーの名とテキーラにちなんでアガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバー(Agave Tequilana Weber variety Azul)という品種名が付けられました。

テキーラの原料にはブルー・アガベの葉を切り落として残る球状の茎の部分を使います。この球茎(きゅうけい)が直径70〜80センチ、重さ30〜40キログラムに育ったものが適していますが、そこまで育つには最低でも6年以上かかります。球茎は見た目がパイナップルに似ていることからピニャと呼ばれています。ピニャを蒸して糖化させたもの押しつぶして搾り取った液を発酵、蒸留して造ります。

なお、世界的なテキーラ人気のために2010年代後半以降は原料不足が深刻な状況となっています。

アガベ畑
アガベ畑

原料のアガベ はメキシコのハリスコ州、グアナフアト州、ナヤリ州、ミチョアカン州、タマウリバス州の特定地域で生育されたものを使い、それらの地域の認定された蒸留所で造らなくてはならない。

なおテキーラという名称の由来になっているテキーラ村はハリスコ州にあり、テキーラ村を含むハリスコ州はテキーラ生産の中心地となっています。大半のアガベがテキーラ村を含むハリスコ州で生産されています。

指定以外の地域で作られたものは、例え同じ原料と製法でもテキーラと名乗ることはできません。そのためそれらはピノスという名前で売られています。

2回以上の蒸留がされていなくてはならない。

ほとんどのテキーラが2回蒸留ですが、3回蒸留や4回蒸留しているものもあります。

アルコール度数が35%~55%以内でなくてはならない。

大半のテキーラがアルコール度数40%前後です。

メタノール(メチルアルコール)の含有量は3mg/ml以下でなくてはならない。

メタノールもアルコールの一種ですが、お酒においてアルコールというとエタノール(エチルアルコール)のことを指します。メタノールとエタノールは名前がよく似ているため混同されやすいですが別物です。

メタノールは人体に有毒で摂取量が多すぎると失明などの危険がありますが、天然の果物や野菜に含まれており人間の体内でも代謝のプロセスで生成される物質で、市販されている飲食物に含まれている量を無理なく摂取する分には、通常は問題ありません。ただし、エタノールよりも体内で分解されるのに時間がかかるため、メタノール分が多いお酒を飲むと二日酔いになりやすくなります。

メタノールは蒸留の際にエタノールと共に沸騰して蒸発するため蒸留で除去することが難しく、お酒には多く含まれています。

メローイングの量は1%以下でなくてはならない。

メローイングとはテキーラの風味をまろやかにするために加える水以外の添加物のことで、カラメル色素、オークの抽出物、グリセリン、砂糖ベースのシロップなどの添加が認められています。

ボトルのラベルにNOM番号を表記しなくてはならない。

NOMナンバーとは蒸留所がテキーラ規制委員会(CRT)から認可を受けて付与された生産者番号です。例えば「MON1122CRT」のように表示されます。

 

02テキーラの分類

テキーラは発酵に使用されるブルー・アガベの使用量から「100%アガベ(プレミアムテキーラ)」と「テキーラ」の2つに分類されます。

100%アガベ

ブルー・アガベ以外の糖分を一切混ぜないで造られたものが「100%アガベ」です。「プレミアム・テキーラ」とも呼ばれます。

認定生産者が管理する指定地域内の瓶詰め工場で瓶詰めされなければなりません。

「100% de agave」「100% puro de agave」「100% agave」「100% puro agave」のいずれかがラベルに表記されています。

他の原料を混ぜたテキーラと比べて雑味が少なくアガベ由来の風味や甘味があって飲みやすいとされています。

テキーラ

ブルー・アガベ以外の糖分を混ぜて造られたものは単に「テキーラ」と呼びます。かつては、スペイン語で混合を意味する「ミクスト(Mixto)」とも呼ばれていました。テキーラと呼ばれるには全糖分の51%以上がブルー・アガベ由来でなくてはなりません。残りの原料にブルー・アガベ以外のアガベを使うことは認められていません。サトウキビの糖蜜、ショ糖、ブドウ糖、トウモロコシ由来の糖分などが使われます。

テキーラは100%アガベと異なり、認定生産者に属さない瓶詰め工場での瓶詰めが認められています。

03テキーラのクラス分け

「100%アガベ」と「テキーラ」の2分類とは別に、蒸留後の熟成期間に応じて次の5つのクラス分けがあります。

ブランコ(シルバー・テキーラ)

蒸留後の樽熟成が2ヶ月未満の無色透明のものです。

「ブランコ(Blanco)」はスペイン語で「白い」という意味です。「プラタ(Plata)」とも呼ばれますが、これはスペイン語で「銀」という意味です。無色透明なことからこのように呼ばれています。英語圏では「シルバー(Silver)」や「ホワイト」「クリスタル」とも呼ばれます。

アガベ由来の青臭さやイモ臭さが強い反面、フレッシュ感がありキレのある口当たりが特徴です。

日本では単にテキーラというとブランコを指していることが多いです。

クエルボ・エスペシャル・シルバー

ホーベン(ゴールド・テキーラ)

ブランコに樽熟成させた他のクラスのテキーラをブレンドするか、カラメル色素などで着色したものです。金色がかった色をしています。

「ホーベン(Joven)」はスペイン語で「若い」という意味です。「オロ(Oro)」とも呼ばれますが、これはスペイン語で「ゴールド」の意味です。英語圏では「ゴールド(Gold)」とも呼ばれます。

ブランコに比べてまろやかになっています。

レポサド(エイジド・テキーラ)

オーク樽で2ヶ月以上から1年未満の間、熟成させたタイプです。樽の容量は問いません。

「レポサド(Reposado)」はスペイン語で「十分安ませた」というような意味です。英語圏では「エイジド(Aged)」とも呼ばれます。レポサドもホーベン同様に金色がかった色をしているため「ゴールド」と呼ばれることがあります。

レポサドに1年以上熟成させたテキーラをブレンドしたものもレポサドに分類されます。

原料の風味と樽の香りとが混ざり合い、まろやかな口当たりが特徴です。

クエルボ・トラディショナル・レポサド

アニェホ(もしくはアネホ)(エクストラ・エイジド・テキーラ)

容量600ℓ以下のオーク樽で1年以上から3年未満の間、熟成させたタイプです。褐色をしています。

「アニェホ(Añejo)」はスペイン語で「十分熟成された」というような意味です。英語圏では「エクストラ・エイジド(Extra-aged)」とも呼ばれます。

長期間の熟成により重厚なコクと芳醇な風味と樽の香りが効いたテキーラです。

アニェホに3年以上熟成させたテキーラをブレンドしたものもアニェホに分類されます。

エクストラ・アニェホ(もしくはエクストラ・アネホ)(ウルトラ・エイジド・テキーラ)

容量600ℓ以下のオーク樽で3年以上熟成させたタイプです。

「エクストラ・アニェホ(Extra Añejo)」や「ウルトラ・エイジド(Ultra-aged)」と呼ばれます。

より奥深く、樽の個性が強く反映された味となっています。

04テキーラの製造方法

  1. ブルー・アガベを栽培します。苗を植えてから収穫できるまで6~12年ほどもかかります。
  2. ブルー・アガベの葉をコアという専用の刃物で切り落とし球茎(ピニャ)を収穫します。この収穫を専門に行う職人はヒマドール(jimador)と呼ばれます。
コアでアガベの切り落としている様子
コアでアガベの切り落としている様子
  1. ピニャい含まれている多糖類(デンプン)を糖化させるために加熱します。マンポステラと呼ばれる伝統的な石窯で2日ほどかけて蒸気蒸しにする場合と、アウトクラベと呼ばれる巨大な蒸気釜(圧力釜)で半日ほどで蒸しあげる場合があります。現在はアウトクラべを使う場合が多くなっています。蒸して糖化が進んだピニャは褐色になります。
  2. 蒸して熱くなったピニャを自然に冷ました後に破砕、加水、圧搾してモストと呼ばれる甘い汁を絞り出します。タオナと呼ばれる大きな石臼で押しつぶす伝統的な手法と、電動のシュレッダーと圧搾機で絞り出す方法がありますが、現在はタオナを使っている蒸溜所はほとんどありません。
  3. 絞り出したモストをタンクに移し、自然発酵もしくは酵母を加えて発酵させてアルコール化します。自然発酵させるか酵母を使うか、酵母を使う場合はどんな酵母を使うか蒸溜所ごとにこだわりの異なる手法が様々なテキーラを生み出します。発酵には数日間かかります。
  4. 発酵してアルコール度数が5~7%ほどになった液を単式蒸留器か連続式蒸溜機で2回蒸留します。このうち2回目の蒸留の最初に溜出される部分(ヘッド)と最後に溜出される部分(テール)は味が悪いので除去して中溜部分を取り出します。蒸留で取り出した原酒はアルコール度数が50~55%ほどになっています。
ホセ・クエルボの銅製蒸留器
ホセ・クエルボの銅製蒸留器 CC BY-SA 3.0, リンク
  1. 蒸留液をフィルターに通してろ過して雑味を除き、水を加えてアルコール度数を調整したものがブランコとなります。樽やタンクに貯蔵、熟成させたものがレポサドやアニェホとなります。どんな樽を使うか、どんなフィルターを使うかによって様々なテキーラが生まれます。

05テキーラの発祥と歴史

テオティワカンのピラミッド
テオティワカンのピラミッド

メキシコの地域には古くからアガベをはじめとしたリュウゼツラン科の植物の絞り汁を発酵させて造ったプルケと呼ばれる醸造酒があり、西暦200年頃にはすでに飲まれていたと考えられています。山火事が起きた際にアガベの中に酒ができていたという伝説もありますが本当のところは定かではありません。

時を隔て14世紀中頃から1521年にスペインに征服されるまで栄えていたアステカ王国の時代にもプルケは飲まれていたようです。

16世紀にアステカを征服したスペイン人が蒸留技術を伝え、プルケと同様にアガベを原料にしたメスカルという蒸留酒が造られました。メスカルは安く作れることから広く飲まれるようになりました。特にメキシコ西部にあるハリスコ州テキーラ村周辺でメスカル造りが盛んになりました。1600年頃にはアルタミラ侯ペドロ・サンチェス・デ・タグレ(Pedro Sánchez de Tagle)がハリスコ州に蒸留所を作り、メスカルの大量生産を行っていました。

テキーラの名を世界に広めたのはホセ・クエルボ社ともサウザ社とも言われています。

1758年にホセ・アントニオ・クエルボがスペイン王フェルナンド6世からテキーラ周辺の土地を与えられてアガベの植樹を許可を得ます。その後カルロス3世の時代には酒造を禁じられますが、1795年にホセ・マリア・グアダルーペ・クエルボが当時のスペイン国王カルロス4世からメスカルの製造と販売の許可を得てホセ・クエルボ社を設立しました。

一方、1873年にドン・セノビオ・サウザがサウザ社を設立しました。初めてラベルにテキーラと表記したとされています。

19世紀にはテキーラはメスカルと呼ばれていて、テキーラ村で作れたメスカルはメスカル・デ・テキーラ(mezcal de tequila)と呼ばれていました。1893年にシカゴで開催されたワールド・フェアでは「メスカル・ブランデー」の名前で出品されています。1910年にサン・アントニオで開催されたリカー・ショーでは「テキーラ・ワイン」の名前で出品されています。1900年前後を境にテキーラ産のメスカルに対するテキーラという呼び名が普及していったようです。

いずれにしても、19世紀にテキーラ町でのメスカル造りはより盛んになっていったことが伺えます。

マルガリータ・カクテル
マルガリータ・カクテル

1968年にメキシコ・オリンピックが開催された際に、テキーラ・ベースで作られたマルガリータ・カクテルが人気を呼び、テキーラが世界的に知られるようになりました。

テキーラが世界的なお酒としての知名度を上げると、テキーラ市以外で造られたメスカルや、ブルー・アガベ以外の原料で造ったメスカルもテキーラというラベルで売られるようになりメキシコで社会問題化しました。その結果、1974年にテキーラの産地や原料が法律により厳格に定められました。

2006年には、ブルー・アガベの栽培地やテキーラの蒸留所、テキーラの街並みや酒場などが「テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観」(Agave Landscape and Ancient Industrial Facilities of Tequila)として世界遺産に登録されました。 

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