カクテル作りの技法

カクテル作りの技法

最終更新日:2022年9月3日

世界には非常に多くのカクテルがありますが作る際に使う技法は共通点が多く、いくつかの方法を覚えれば大半のカクテルに対応できます。美味しいカクテルを作るためには熟練と経験が必要ではありますが、道具さえ揃えれば手軽に挑戦できるものばかりです。

01基本の4技法

カクテルは数種類の飲料をミックスして作る飲み物ですが、ミックスの仕方には主に3つの技法があります。それがシェークステアビルドです。また技法としては使用頻度が少ないですがブレンドという方法を使うこともあります。

シェーク

シェーク(shake)とはシェーカーという専用の同時に氷と材料を入れて、振って(シェークして)つくる方法です。混ざりにくい材料を急速に混ぜると同時に冷たくすることができます。
お酒に空気が触れて気泡となって混ざりこむため、アルコール度数が高いお酒がまろやかな口当たりになります。
シェーカーに入れる氷は冷やすために使いグラスには注がないので、短時間でぬるくなってしまいます。また、混ざった気泡も時とともに抜けてしまいます。ですので、シェークの技法は主に短時間で飲むショート・カクテルを作る際に使われます。

シェーカーについて

3ピース・シェーカー

3つの部分に分かれるシェーカーで日本ではシェーカーといえばこれが主流です。ステンレス製でが一般的で、材料を入れるカップ部分(ボディ・Body)、グラスにカクテルを注ぐ際に氷などを通さないようにするための網状のフタ部分(ストレーナー・Strainer)、シェークする際に閉じるキャップ部分(トップ・Top)の3つの部分に分かれます。様々なサイズのものがありますが、個人で使用する場合は350ml程度までの大きさのものが適しています。

2ピース・シェーカー

金属製のカップとグラスの2つの部分に分かれるシェーカーでボストン・シェーカーとも呼ばれます。海外のバーでよく使われています。ストレーナーが付いていないため、カクテルをグラスに注ぐ際は別途ストレーナーが必要です。
容量が大きくて空気がたくさん入るため、3ピース・シェーカーよりもまろやかな味に仕上がります。フレッシュ・フルーツを使うカクテルに向いており、フルーツの香りがよく混ざります。

シェークの手順

  1. グラスに氷を数個入れて冷やしておき、つくる直前に氷を捨てて水けをきっておく。
  2. シェーカーに材料を入れる。
  3. シェーカーに氷を8〜9分目まで入れる。
  4. ストレーナーをかぶせて(3ピース・シェーカーの場合)、トップをはめる。
  5. シェーカーを持つ。シェークしやすく、シェークする際にトップが外れない形であればよい。一例としては、利き手の親指でシェーカーのトップをおさえて残りの指は広げてボディー脇を挟むように持つ。反対の手は中指でボディの底を支えて残りの指は底からシェーカーを包むように添える。
  6. シェーカーを振る。振り方や振る回数に決まりはないが、ゆさぶるだけでなくできるだけしっかり振る。シェーカーを持つ、シェーカーの表面に霜がついて指先が冷たく感じるくらいまで降る。砂糖・卵・クリームなど溶けにくい材料をシェークする場合は、多めに振る。
  7. トップをはずし、ストレーナーが外れないようにおさえながら、静かにグラスに注ぐ。その際はグラスが倒れないようにグラスの脚を指で支えておく。

ステア

ステア(stir)とは「かき混ぜる」という意味の英語で、ミキシング・グラスに氷と材料を入れて、バー・スプーンでかき混ぜてつくる方法です。
ミキシング・グラスとは材料をミックスするための大型のグラスで、バースプーンで混ぜやすいように内側の底が丸くなっていたり、注ぎ口があったりします。
バー・スプーンとは主にバーで材料を混ぜたり量を測るのに使われるスプーンで、指先で回転させやすいように柄が長く中央部が螺旋状にねじれた形をしています。
混ざりやすい材料を使うカクテルに向いている手法でシェークと異なり空気が混ざらないため、素材の持ち味が生きたシャープな仕上がりになります。

ステアの手順

  1. グラスに氷を数個入れて冷やしておき、つくる直前に氷を捨てて水けをきっておく。
  2. ミキシング・グラスに氷を4〜5個入れて水を7分目くらいまで加え、バー・スプーンでさっと回して氷についた霜や角を取り、ストレーナーをはめて水だけを捨てる。これは、あらかじめ氷の溶けやすい部分を溶かしてしまって、カクテルが水っぽくなったり雑味が出るのを防ぐ意味があります。
  3. あらかじめ冷やしておいた材料を注ぎ、バー・スプーンの背がミキシング・グラスの内側の側面から常に離れずになぞるようにして素早く15〜20回ほど回す。
  4. ミキシング・グラスにストレーナーをはめて、ストレーナーが外れないようにおさえながら、静かにグラスに注ぐ。

ビルド

ビルド(build)とはカクテルを飲むグラスに材料を直接入れて注ぎ、バー・スプーンで混ぜるだけのシンプルな方法です。

ビルドの手順

  1. 材料をあらかじめよく冷やしておく。
  2. グラスに氷を入れるタイミングは、レシピに従う。材料より先に入れるか、材料を注いでから氷を入れるかのどちらか。
  3. グラスに材料を注いで、バー・スプーンを上下に動かしながら軽く混ぜる。炭酸飲料を使っている場合はは気が抜けやすいので、静かに1〜2回ほど混ぜるので十分。

ブレンド

ブレンド(blend)とはブレンダーを使って材料を混ぜ合わせる方法です。日本ではブレンダーを一般的にミキサーと呼んでいますが、呼び方が違うだけで基本的に同じものです。
クラッシュド・アイス(細かく砕いた粒状の氷)を材料にフローズン・スタイルのカクテルをつくる場合や、フレッシュ・フルーツを材料にトロトロに仕上げる場合に使います。

ブレンドの手順

  1. グラスに氷を数個入れて冷やしておき、つくる直前に氷を捨てて水けをきっておう。
  2. ブレンダーに氷3〜4個と水1カップを入れてスイッチを入れ、10秒ほど回転させてブレンダーを冷やし、中身をいったん捨てる。
  3. ブレンダーに材料を注ぐ。
  4. クラッシュドアイスを入れる。1杯のグラスに対して60mlが目安。
  5. 15〜20秒、シャーベット状になるまでブレンダーを回す。
  6. バー・スプーンでとり出し、グラスに盛る。

02その他の技法

デコレーション

デコレーション(decoration)とは英語で「装飾」のことですが、主にフルーツをはじめとした食材をカクテルに飾ることをデコレーションと言います。同様に「飾り」や「つけ合わせ」の意味でガーニッシュ(garnish)と呼ばれることもあります。
果汁を使ったカクテルにその果物のスライスを飾ったり、香草系リキュールを使ったカクテルに香草の葉を飾ることで、そのカクテルの持ち味を引き立てることができます。
飾り方は、直接カクテルの液面に乗せたり、切り込みを入れてグラスの淵にかけたり、カクテルピンに刺してグラスに落としたり、様々です。
辛口のカクテルにオリーブを、甘口のカクテルにチェリーをそれぞれカクテルピンに刺して飾るのもデコレーションです。
レモンやライムの皮を螺旋状にむいて飾るホーセズ・ネックというスタイルも有名です。

スノースタイル

スノー・スタイル(snow style)とはグラスの縁に砂糖か塩をまぶす手法で、雪が凍りついたように見えることからこのように呼ばれています。スノー・スタイルとは日本で作られた言葉で海外ではrimmed with sugar(縁に砂糖)または rimmed with salt(縁に塩)と表現されます。見た目の美しさを引き立てるだけでなく、カクテルの味わいにも変化をもたらします。飲む際はグラスを回しながら全ての砂糖や塩を舐めながら飲んでも良いですし、舐めずに飲んでもよいです(といっても最初の一口はどうしても口に当たってしまいますが)。

スノー・スタイルの手順

  1. カクテルを注ぐ前のグラスの縁をレモンやライムの切り口に当てて一回転させるか、リキュールを使って濡らす。
  2. 平らな皿に砂糖か塩を広げて、逆さまにしたグラスの縁を軽く押し当てる。

ピール

ピール(peel)とは野菜やフルーツの皮のことですが、カクテルレシピでは、最後の仕上げにレモンなどの柑橘類の皮をしぼって表面のオイル分をカクテルに飛ばして香り付けする手法のことをいいます。
レモンの皮でやる場合レモン・ピール、オレンジの皮ではオレンジ・ピールなどのように呼びます。

ピールの手順

  1. レモンやライムなどの柑橘類の皮を2〜3cm程度の楕円形に薄く削ぎ取る。表皮の内側の白い部分は苦味の元になるので厚く切らないようにする。
  2. 皮の表面をカクテルの方に向けて親指と中指ではさみながら、グラスの斜め上15〜20cmくらいのところから人差し指で押すようにして皮の表面のオイルをグラスに向けて飛ばします。

リンス

リンス(rinse)とは「ゆすぐ」や「浸す」という意味の言葉ですが、グラスの内側を少量のビターズやベルモットなどで濡らしておくことでカクテルに風味付けする技法のことをいいます。

リンスの手順

  1. カクテルを注ぐ前のグラスにリンスするお酒を少量入れる。
  2. グラスを傾けてまわして内側をまんべんなくぬらして、余分に残った分はグラスから捨てる。