ベルモット

ベルモットを知る

最終更新日:2022年12月11日

ヴェルモットは白ワインにニガヨモギをはじめとした数十種類の香草や薬草やスパイス成分を加えて風味づけしたものにブランデーなどのスピリッツを加えてアルコールを強化したフレーバードワインの一種です。日本の酒税法上は「甘味果実酒」に分類されます。

ヴェルモットによく使われている成分にはコリアンダー、クローブ、シナモン、キニーネ、アンジェリカ、ビターオレンジの皮、カルダモン、カモミール、ジンジャー、マジョラム、ラブダナムなどがありますが、メーカーはそれぞれのレシピを秘密にしており、ブランドによって風味は様々です。

アペリティフ(食前酒)として飲まれるほか、マティーニやマンハッタンをはじめとした様々なカクテルの材料として飲まれます。

現在、ヴェルモットの主産地はイタリアとフランスですが、ヴェルモットという名前はドイツ語でニガヨモギを意味するWermut(ヴェルムト)が語源です。英語ではVermouth(ヴァームース)と呼ばれますが、これはヴェルムトをフランス語で発音したものです。

アルコール度数

14 〜 20%

01ベルモットの種類

大きく分けて甘口のスイート・ベルモットと辛口のドライ・ベルモットの2種類があります。発祥国に由来してそれぞれイタリアン・ベルモットやフレンチ・ベルモットとも呼ばれますが、それぞれ別の国でも造られています。

ドライ・ベルモット

糖分が少なく無色に近い色をした辛口のベルモットです。スイート・ベルモットと比べて苦味が強いですが、ボディが軽い(シンプルでクセが少ない)ため、白ワイン代わりに料理に使われることもあります。一般的に糖分は4%以下です。

主にフランスで造られていたことからフレンチ・ベルモットとも呼ばれています。

ドライ・ベルモットの銘柄ピックアップ

ノイリー・プラット ドライ

1813年にジョセフ・ノイリーによって誕生したドライ・ベルモットで、ドライ・マティーニには欠かせないベルモットとしてバーテンダーから圧倒的な支持を受けています。また、他のベルモットと違い、加熱した際に味わいを失わずコクを保つため、フレンチのシェフからも料理を引き立てるハーブワインとして重宝されています。

原料となる白ワインは、南仏ラングドック・ルーション産の2種類の白葡萄ピクプール種・クレレット種が原料です。ピクプール種は、繊細で心地良い酸味を持つワインになります。クレット種はフレッシュでライトな風味でフローラルな芳香のワインに仕上がります。2年以上の熟成を経た後、2種類のワインはミックスされ、天然葡萄果実からつくった"ミステル"という甘味ワインを加えることにより、味わいにまろやかさを与えます。

その後2000Lのオーク樽に移され、世界4大陸より厳選された20種類のハーブ(オニアザミ、コリアンダー、ナツメグ、オレンジ等)を約3週間浸漬させ、職人が約6週間かけて風味の最終的な仕上げを行って完成します。

度数
18%
生産地
フランス
製造元
バカルディ

スイート・ベルモット

糖分を加えた甘口のベルモットです。ドライ・ベルモットと比べてハーブやスパイスの風味が強いです。一般的に10〜15%の糖分があります。

主にイタリアのピエモンテ地方で造られていたことからイタリアン・ベルモットとも呼ばれています。

カラメルによって赤色に着色されているロッソ(Rosso)と、着色していない黄金色のビアンコ(Bianco)があります。スイート・ベルモットというとロッソが主流です。ロッソは甘味や苦味が比較的強く、独特の味わいが楽しめます。ビアンコは甘味と苦味が抑えめとなっています。

スイート・ベルモットの銘柄ピックアップ

マルティーニ ロッソ

1863年にマルティーニとロッシによってイタリアのピエモンテ州で創業を開始した老舗ブランド「マルティーニ」のベルモットの中でも最初に開発されたベルモットで、イタリアン・ベルモットの代表格と言えます。 

苦味、甘味、香りのバランスが取れた爽やかなドリンクとして、世界中でアペリティフとして愛飲されています。

度数
15%
生産地
イタリア
製造元
バカルディ
チンザノ ロッソ

チンザノは1757年にイタリアのジョバンニとカルロの兄弟がピアモンテ州のトリノで創業した老舗ブランドです。ロッソはチンザノで最初に売り出されたベルモットです。白ワインをベースにハーブやスパイスを贅沢にブレンドし、カラメルで色付けした甘口のベルモットです。

スムースな口当たりにかすかな甘さ、スパイシーで複雑な苦味、ヨモギや柑橘系の香りが感じられます。ストレートやロック、ソーダ割りのほかカクテルの材料として、楽しむことができます。

度数
15%
生産地
イタリア
製造元
カンパリ・グループ
マルティーニ ビアンコ

老舗ブランド「マルティーニ」のベルモットで世界シェア1位の売上を誇ります。

イタリア語で「もっとも白いもの」を意味する”Bianchissimo”と呼ばれた甘口ヴェルモットは苦味がなくソフトな味わいです。濃い黄金色は、慎重に選び抜かれた白ワインと香りの成分として用いられる植物エキスからきています。マルティーニ・ヴェルモットの中で、最もマリッジの工夫がされ、柔らかなフローラル系の芳醇な香りを持っています。

食前酒としてもカクテルの材料としてもおすすめです。

度数
15%
生産地
イタリア
製造元
バカルディ

02ベルモットの歴史

ワインに薬草を浸して薬用酒として飲む方法は紀元前の古代ギリシアの時代に既に存在していました。胃腸の調子を整える成分としてニガヨモギが知られていました。

現代のベルモットにつながると考えられる飲み物としては、15世紀以降にハンガリーで飲まれていたヨモギをはじめとした植物や香辛料を漬け込んだワインがあります。この飲み物はハンガリー語でヨモギ入りワインの意味で「ürmösbor」と呼ばれています。(ハンガリー語でヨモギは「üröm」といいます)

また、ベルモットの名前の由来はニガヨモギを意味するドイツ語のWermutですが、16世紀頃のドイツにはニガヨモギの花で香り付けしたフォーティファイド・ワインが存在してい他ことが知られています。

この頃に、イタリア北部のピエモンテではダレッシオ(D'Alessio)という商人が「ニガヨモギ・ワイン(wormwood wine)」の名で同様の製品の生産を始めました。その後まもなく、フランス東部と南部でも競合銘柄が造られ始めました。

この飲み物は17世紀中頃のイギリスで「ベルモット」と呼ばれるようになって、現在までこの名称で呼ばれています。

 

スイート・ベルモットやドライ・ベルモットという種類が確立したのは18世紀後半から19世紀にかけてのことです。まず1786年にイタリア北部ピエモンテ州のトリノでアントニオ・ベネデット・カルパノ氏(Antonio Benedetto Carpano)が初めてスイート・ベルモットを発売しました。このベルモットは当時の王室御用達でした。そして1813年に、フランス南部エロー県のマルセイランで植物学者のジョセフ・ノイリー(Joseph Noilly)が初めてドライ・ベルモットを造りました。

この頃にはベルモットは薬用酒としてではなく、食前酒として飲まれるようになっていきました。

 

19世紀後半以降、カクテルの広まりとともにベルモットはカクテルの材料として使用されるようになりました。

特に1950年代のマティーニ社によるカクテル「マティーニ」の売り込みが成功して、ベルモットが世界中で飲まれるようになったと言われています。

スイート・ベルモット

ドライ・ベルモット

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